作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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【書評】徹底抗戦


堀江さんの「徹底抗戦」を読みました。
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3年前の出来事ですか。どちらかというともっと前の出来事のように思っちゃいます。それだけこの間にいろんなことがあったということなんでしょうね。
2004年にオンザエッジがライブドアに社名変更してから2006年1月に家宅捜索が入るまで2年しか経ってないんですね。
その間にホリエモンは一躍超有名人になった訳ですから、その急成長ぶりが分かります。

強制捜査が入ったときは、「会社が何か悪いことをしていたんだろうな」と僕も思っていましたが、この本を読んで
ちょっと考え方が変わりました。もちろん当事者が著した本ですから、多少のバイアスがかかっているのは間違いないと思います。

それにしてもですね…国家の権力というのは恐ろしい。世の中に正義と悪があるのは、それ相応の理由があるからで、悪が悪と呼ばれるようになるのはやっぱり悪いことをしているからなんだ、という単純な話じゃないんですね。
正義に見えるようなものであっても、それは実は悪だったり、悪に見えるようでも、それは悪ではなかったり。
権力がある機関や、人々にとっては、利権とかプライドとか保身とか、そういう別の理由でいくらでも正義や悪はでっちあげられるんだなってことです。

昨今の経済事件の重罰化の流れは、検察OBに対して企業のコンプライアンス(法令順守)特需をもたらし、多くの企業は多額の報酬を払って検察OBを受け入れるようになった(顧問などで)。
一種の天下りのようなものだ。警察がパチンコ業界の自主規制団体みたいなものに天下りしているのと同じ構図だろう。
ただ検察庁の場合は、警察よりもタチが悪い。なぜなら検察官は捜査権限と基礎権限の両方を持つからである。その検察が経済事件に本格的に首を突っ込んできたというのは、警察がパチンコ業界を財布代わりにしているように、企業全体を財布にしようと考えていることに等しい。
細かく見ていけば、不正をしていない企業などは、ほんのわずかだ。氷山の一角という言葉をご存じだろう。一罰百戒という言葉もご存じだろう。不正を見逃すも見逃さないも、起訴をするもしないも、操作をするもしないも、検察庁の胸先三寸。

各地方検察庁には、特捜部や特別刑事部と呼ばれる検察庁内部の捜査機関が置かれている。本書で何度も指摘してきたが、これは、恐ろしい機関だ。
検察庁は起訴できる唯一の機関である上に、捜査権限も持っているからっだ。つまり検察庁は、捜査、逮捕、起訴までできる、国内唯一の機関なのである。操作、逮捕、起訴を同時にできるということは、自分たちが捜査した事件は、面子にかけて起訴してしまう可能性が高いということだ。

粉飾決算は罪だけど、他の事例と比べてみても実刑判決が出たライブドア事件の判決は行きすぎなんだと思います。
「気に入らないから潰す」ということが平気で出来てしまう。バカを見ないためには目立ちすぎないことです。

あまり関係ないけど、その後称号変更された「ライブドアホールディングス(LDH)」と「ライブドア」は厳密には別物か。
多額の和解金や、株主配当をしているのはLDHのほうなんですね。
LDHの最近の決算報告を見ると、和解金に300億円以上計上されており、さらに6月に発表された配当は総額680億円。赤字でありながらそれだけの資産があることに驚きです。
このブログで、「堀江被告が虚業といわれながら築いてきたものの大きさを感じます。」とありますが、ほんとにその通りだと思います。

著書に戻って、堀江さんは今のライブドアについてこう述べています。

我々旧経営陣の時の遺産で、ライブドアは2007年9月期には100億円を超える利益剰余金を計上するに至っている。これは我々が企業価値を上げ続けてきた証左である。あれだけの風評被害を受けながらも、利益剰余金を確保できるというのは、驚嘆すべきことと言える。
しかしながら、現経営陣は企業価値を上げる努力をしているとは言い難い。世間からのバッシングを恐れるあまり、コンプライアンス重視を逃げ口上にして何もアクションを起こさないでいるだけである。
何もしなければ法を犯すこともないだろう。何もしないで給料さえ貰っていれば一番安全なのだ。何もせずとも潤沢な現預金がある会社だ。このまま細く長くやっていけば100年経ってもつぶれないだろう。
金利で給料が払えるくらいだ。

今の社長さんも若いですもんねぇ。僕と歳が変わらないくらい。今のライブドアはファイナンス部門が縮小して純粋なIT企業になってきてるんだと思うんですが、そのIT分野でまたgoogleみたいにあっと言わせるようなことをして返り咲いて欲しいですね。

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