作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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【書評】脱「ひとり勝ち」文明論


脱「ひとり勝ち」文明論を読みました。
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将来を悲観しないで新しい技術に目を向け、世界を良くしていこう!と呼びかける本です。

新しい技術、その一つに「太陽電池」があります。
太陽電池は、僕はだんだん普及している感じはしていましたが、著者は「もっとアグレッシブに普及させないといけない」と言います。
日本は、それを先駆けて研究開発してきた国であり、世界をリードするべき立場にあるからです。
今はコスト的にまだ割高ですが、大量生産すればすぐにその問題は解決するそうです。

いま日本は、新しい文明の主導的位置に立つ可能性と、そこから落っこちてしまう可能性の、その両方の道へと分かれ行く岐路に立っているのです。

太陽電池の効果は、「地球の地表面積の1.5パーセント」に太陽電池パネルを貼れば、世界中の70億人が「アメリカ人と同じくらいの裕福なエネルギーを使えるようになる」というものです。

世界の70億人が、平等に、「アメリカ人と同じくらいの裕福なエネルギーを使えるようになる」という世界の実現は、世界で最も問題になっている「貧困」がなくなる、ということでもあります。

この20年間で、どの発電が最も効果的なのかは、もうはっきり、太陽電池なんだ、と判明しています。
だから、生き残るための技術を早めに選択して、決心して、そこに国をあげて全力投球をする。
それをすることこそ、脱「ひとり勝ち」文明の実現にいちばん近くなるのです。

このように、太陽電池の普及は、「貧困」をなくしてくれるものと説明しています。
現在は、石油などの化石燃料を先進国が優先的に使い、発展途上国との貧富の差が生まれる原因になっていますが、太陽電池はどの場所にも平等に与えられるエネルギーであり、しかも枯渇しない。
その普及を、日本が担うべきということです。

ですので、そのような話を、研究現場から、早めに言っておきたいと思っているのが本書なのです。
「変われない理由もわかりますし、その事情ももっともですけど、そろそろ、変わったほうがいいですよ」
本書のメッセージは単純に言ったらこの一点なんですね。

そして、話は著者の専門分野である「電気自動車」へ。
この電気自動車エリーカがすごい。

・東京から名古屋までの300キロを300円ほどのコストで移動できる
・ポルシェを上回る加速性能で、時速400キロ出せる
・モーターを車輪の中に埋め込むので、車内の空間が広い
・タイヤを8輪にすることで快適性を追求

それでいて、自動車が出す二酸化炭素の排出をゼロにできるのですから、夢のような車です。
その自動車も予算さえつけば、研究開発が活発になり大量生産に向けて加速できる、そして今の二酸化炭素排出問題など一気に解決できます。
確かに、今ある生活を切り詰めて、エコに血眼になるよりも、一発おおきなイノベーションをかまして、二酸化炭素の問題なんて一気に解決できる方が
いいように思います。
そのためには世論の高まりが重要だと説いています。
今の技術を効率化するのではなく、イノベーションの先に未来がある。夢を語る科学技術者の前向きな本でした。モチベーションをあげるのにもいい本だと思います。

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