作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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【書評】お客をハメる「売れる!」心理学


内藤誼人著「お客をハメる「売れる!」心理学」を読みました。
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カバーの絵がなんか軽そうだったし、中の挿絵も見てもマンガっぽかったので、そんなに内容は期待してなかったのですが、なかなかためになる本でした。
失礼ながら、どこぞの中小企業の経営者が書いた暇つぶし本だと思っていたのですが、立派な心理学者様の書いた実証研究に基づく本でした。
参考文献の量や引用もしっかりしているので、数多くの実例に基づく客観的データが多く、それを1冊に凝縮した集大成的な濃さを持っています。

あの勝間和代さんも、本を著したあとは執筆する努力に比べて5倍くらい売る努力をしているそうです。売るためにいかに知恵を絞って汗を流すことが大事かを思い知らされます。
人間は合理的であると誰もが信じがちですが、むしろ合理的でない行動を起こすことの方が多い。よって「安くて品質が良い方が必ず売れる」という単純な法則にあてはまることはなく、売れるようにするためには人間の非合理なる行動理由をとことん研究する必要があります。そこが売る努力がとことん必要である理由でしょう。
以前、「予想通りに不合理」を読みましたが、それよりもかなり分かりやすくとっつきやすい本です。

お客というのは、経済学者が予測するような、合理的な判断はあまりしていないようである。カリスマと呼ばれる美容師に髪の毛をカットしてもらうと、数万円もかかってしまうが、普通の床屋さんにいけば、4000円くらいでカットしてくれる。しかも、仕上がりに、そんなに差はない。
このように、みすみす高いお金を捨てるような行為は、経済学の理論からはどうしても予測することができないのだが、心理学の理論を使えば「カリスマ美容師にカットしてもらったほうが、カッコ良くなったと錯覚(勘違い)できますもんね」とたやすく分析できるのだ。

印象に残ったのは以下のトピックです。

・他のお客がいると、なぜかたくさん買物をしてしまう。
閑古鳥がないている店には誰も入りたがらないですもんね
・売りたい価格帯の商品の前後に、「より高い商品」と「より安い商品」を置くこと
消費者はそれで適正価格を判断しようとして、結局のところ平均的な価格のものを買う。
・レストランでドイツワインよりフランスワインを多く売りたい場合、BGMをフランスの音楽にすればよい
音楽の効果は意外と大きいようです。ゆっくりしたテンポの曲を流すとお客の滞在時間が長くなり、リズミカルな曲を流すとお客の滞在時間が短くなるそうです。
・おまけはケチケチせずにどんどんつけろ
商品単価だけをいたずらに安くするより、価格を低く抑えるよりもおまけを付けた方がリピート率が高い。

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