作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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【書評】日本「半導体」敗戦


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昔、父が「トランジスタ技術」を毎号購読していました。

雑誌の中をのぞいてみると、何やら難しいことが書いてあるので、少年の心にはそれ以来、「半導体とはなにやら難しいもの」という固定観念だけがつきまとっておりました。

 

しかし、巷で話題になっていたので、「日本「半導体」敗戦」を読んでみました。

こういう「日本はもうダメポ」論、結構好きです。もっとやれ!

 

日本半導体産業には深刻な病気がある。それは、過剰技術で過剰品質、過剰性能の製品を作ってしまってしまう病気である。これは、半導体だけに限らない。ガラパゴス化した携帯電話や、世界市場でシェアを失った薄型テレビなどデジタル家電も、すべては、同じ病気にかかっている。この病気のもう1つのやっかいな点は、コスト意識が無いということである。つまり、この病気に冒されると、過剰技術で、過剰品質、過剰性能かつ高価格の製品を作ってしまうため、グローバルなビジネスで敗北してしまうのである。この病気のせいで、私の人生は、大きく狂ってしまった。

 

 

グラフを見ると、日本の半導体は1980年代後半を頂点にして、凋落の一途ですね。

このグラフを見て、「日本はこのままでまだやれる」なんて思う方がおかしい、ってもんですよね。

 

 

 

地球上最強の生物となった恐竜は、氷河期などの環境の変化に対応できず絶滅した。1980年代に世界を席巻した日本半導体の凋落ぶりは、あたかも恐竜を彷彿させるのである。

 

「日本半導体って、ゴーンが来る前の日産自動車みたいだね。日産自動車は、技術オタクの会社で、過剰技術、過剰品質のせいで、1990末に倒産しそうになったんだ。ウチの会社は、日産のブレーキを作っていたのだけれど、たかが足で踏むブレーキパッドに、なんでこんな精度の高い加工を要求するんだろう? なんでこんな高級な表面処理をさせるんだろう? と思っていた。でも、日産がやれと言うから、やっていた。当然、ものすごく高価なブレーキパッドになったよ。足の裏で踏むだけのただの板なのにね。たぶん、日産は、すべての部品が、そういう過剰品質だったんじゃないかな? だから作れば作るほど赤字になり倒産しかけたんだよ。

  ゴーンが来てなにをやったかって? 簡単なことだよ。原価管理部を作ったのさ。例えば、300万円のスカイラインを作るとするだろう。そうしたら、原価管理部が、まず、原価を150万円と決めるのさ。そして、どの技術を使うか、部品の品質はどうするかを、すべて原価管理部が決めるのさ。最初は、技術者とけんかになったみたいだよ。なぜ、オレたちの開発したこの素晴らしい技術を使わないのか、とね。でも、技術オタクの技術者と、ゴーンのどちらが正しかったかといえば、その後のV字回復を見れば一目瞭然だろう。日本半導体の最大の問題は、ゴーンがいないことじゃないのかな?」

 

 

ブラジル、インド、中国の実体を見て、考え込んでしまった。

これまで、日本にいて、テレビ、新聞、雑誌などを見て思い描いていた経済発展とは、まったく異質なのである。BRICs等の新興諸国では、日本人には想像を絶するような、低所得者層が、ほんのわずかずつ、経済力を持ち始めた、というのが真の実態だ。全体的な所得水準は低く、富裕層の割合もわずかだ。しかし、とにかく、絶対数がべらぼうに大きいのである。中国とインドだけで合計で25億人もいるのである。そのBRICsでは、間違いなく、圧倒的に安いモノが売れている。

  一方、BRICsから見て日本といえば、残念ながら、日本のエレクトロニクスの存在感は、ないに等しい。携帯電話は、圧倒的にノキア。家電製品は、サムスン、LG、フィリップス。日本のソニー、Panasonic、シャープ、東芝、日立、みなマイナー。高品質、高性能どころではない。BRICsには、”日本=高~い!”というイメージが定着している。日本エレクトロニクスは、BRICsでまじめにビジネスをする気があるのだろうか?

  世界一周から帰った直後に、ある講演会でこの話をした。その会場に日立の方がおられたので、「BRICsで売りたいのですか? 売る気が無いのですか?」と聞いてみた。 ”積極的には売らない”という戦略もあると思ったからだ。日立の方は、「売りたいと思っています」と答えた。「でも、こんな状況では売れないですよ。どういうつもりなんですか?」と再度聞くと、「当社は、高品質、高性能な製品を作っているのです」とお答えになった。「誰がマーケティングしているのですか?」聞くと、マーケティングという部署はないという。「じゃ、誰が商品企画をしているのですか? 例えば、インドのテレビなどは?」と聞くと、設計部だという。「設計者はインドにいたのですか」という質問の答えは「いえ・・・」というものだった。

  日本エレクトロニクスは、ただ、作ったものを売っているだけである。サムスン、LG、ノキアなどは、売れるものを作っている。この差は、計り知れないほど大きい。日本エレクトロニクスは、先進国のエゴを押しつけているに過ぎない。

 

 

技術者は技術のことだけ考えればいい、っていうのはもう古い考え方なんですね。自分が作った製品やサービスが、最終的にどうなるのか、どうやったらもっと使ってもらえるのか、というユーザー視点をもっと持たなければなりません。

そして、商売の基本はマーケティングだってことも分かります。

日立の人でさえ、それに気づいていないんですから、大手企業だから優れたブレインを持っている、ということでもないんですね。

個人でもまだまだアイデア次第でやれるっていう、変な自信がつきました。

 

 

 

作者のコラムにこの本のダイジェストともいえる論文が載っているので参考にしてください。

・日本半導体・敗戦から復興へ JBpress(日本ビジネスプレス)
  http://jbpress.ismedia.jp/category/semicon

 

 

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