プレゼンテーションZENを読みました。
著者はアメリカ人?ですが、日本で大学講師をしているそうで、日本にも造詣が深いです。ZEN="禅"の概念をプレゼンテーションにあてはめ、"Simple is Best"の精神を説きます。
プレゼンテーション資料を作成すると言えば、なんといってもPowerPointでしょう。
僕は大学の卒論発表の資料はPowerPointで作りましたし、会社にいたときもPowerPointでのプレゼンも数回やったような気がします。
そういえば、結婚披露宴で見せた資料もPowerPointだったなあ。
このソフトはプレゼン資料を素早く作ることができますが、もともと用意されているテンプレートや、作り始めの段階で存在する箇条書き用テキストボックスなんかがありますので、その誘導通りにつくると、おのずと出来上がりのイメージは決まってしまいます。
もちろんそれはそれでお手軽で良いのですが、
「お前はこうやってプレゼン資料を作れ」
と言われているのに等しく、僕らはそのプレゼン手法に疑問を抱かないまま資料を作ってしまいます。
本書で述べられていることは、箇条書きや、会社ロゴを全ページに掲載するようなお約束のプレゼン資料ではなく、
「プレゼンターのスピーチを演出し、聴衆によりインパクトを与えるためのプレゼン」
を行うための資料作りや姿勢づくりについてです。
デザイナーでもなければ美麗な資料を作り上げることは無理だ、と思うかもしれません。でも、本書を読めば、その才能はデザイナーなど一部のアーチストにだけ与えられたものではなく、人間であれば当然誰もが開花させることができるものであり、セオリーさえ守ればインパクトのあるすばらしいプレゼンができることに気づくと思います。
たとえば、心に残る良質なメッセージと、印象の薄いありふれたメッセージの違いを表す分かりやすい例をを見ていただきたいと思います。
「われわれの使命は、チーム中心の最大規模のイノベーションと、戦略的目標に沿った航空宇宙計画を通じて、宇宙産業の国際的リーダーとなることだ」
「60年代までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう」
最初のメッセージは今日のCEO風の話し方に似ており、印象的ではありません。
2つ目のメッセージはジョン・F・ケネディの1961年のスピーチからの引用です。これはのちに世界を変える明確な目標へと駆り立てることになりました。
スライドの例として紹介されていたものの中に、slideshareで見られるものがありますので紹介しておきます。
スティーブ・ジョブズのプレゼンの技術の素晴らしさについても述べています。
彼のスライドは常にシンプルで、驚くほど美しく、視覚的効果が高い。スティーブは全てのスライドと視覚効果を自分の手で進めながら、これらの美しいビジュアルをスムーズに操っていく。彼自身がスライドを進めているという事実は誰にも意識されることがない。スティーブのスタイルは砕けた会話調であり、ビジュアルと彼の言葉のタイミングはぴったり合っている。彼のプレゼンテーションはしっかりとした構成に基づき、スムーズに進行していくため、我々はまるで小旅行に連れて行かれた気分になる。彼は気さくで、感じがよく、自信に満ちあふれている。
あまりに簡単そうなので、そういったパフォーマンスはスティーブから自然に湧き出てくるものだと思ってしまいがちである。生まれながらのカリスマを生かして聴衆にアピールすることは彼にとってたやすいことだと我々は考えている。だが、それは間違いだ。彼がカリスマ的な人物であるのは確かだが、マルチメディアを使ってプレゼンテーションをしたり、ましてライブデモを行ったりすることを何の準備もなしにできる人間がいるとは思えない。スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションがあれほど素晴らしく、魅力的なのは、彼とそのチームが凄まじいまでの準備や練習を重ね、いとも「簡単」に見えるように努力しているからなのだ。
スティーブのプレゼンは以下で見ることができます。
英語ですが、すばらしいプレゼンであることは見て分かると思います。
Apple – QuickTime – Apple Special Event September 2009
http://events.apple.com.edgesuite.net/0909oijasdv/event/index.html?internal=ijalrmacu
スティーブジョブズと、ビル・ゲイツのプレゼンの違いについて、ここの書評が参考になります。
プレゼンテーションzen – idesaku blog
http://d.hatena.ne.jp/idesaku/20090926/1253923466
最後に、本書中にちりばめられた、名言の中で印象的だったものを載せておきます。
単純であることは究極の洗練である
—レオナルド・ダ・ヴィンチ
あなたのプレゼンテーションのビジュアルが際立てば際立つほど、人々はそれを忘れないだろう。そして何よりも、人々はあなたのことを忘れないだろう
—ポール・アーデン
2300円するちょっと高い本ですが、さすがプレゼンの本らしく、本書そのものがビジュアル的に訴える構成になっており、絵本を読む感覚に近いです。
プレゼンをする人におすすめの一冊です。