言葉を文字通りにとるならば、生命保険とは生命の危険が起こった時のリスクに対して保障してくれる制度ですが、それは目に見えないものであり、いざという時にしか効果を発揮しないものですから、日常生活を送っている分には必要性がほとんど感じられません。
逆に、生命保険を確認できるタイミングと言えば、そういう災いが起こったときではなく、保険営業職員のおばちゃんがやってきて加入を勧められたりするときぐらいです。
日本の生命保険の伝統的な販売手法を義理(G)、人情(N)、プレゼント(P)からなる「GNPセールス」と言うそうです。
「自らが必要だと判断して生命保険に加入した」という人は少なく、そういった営業手法に乗せられて生命保険に加入したという人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
ピーク時には50万人いたといわれる営業職員が、全国津々浦々まで生命保険の必要性を啓蒙し、普及させてきたからだ。生命保険の世帯加入率は90%である。我が国の9割の家庭が何らかの生命保険に加入している計算になる。ちなみに、個人保険の世帯加入率はアメリカが50%、イギリスが36%、ドイツが40%、フランスが59%なので、相対的に日本の普及率がいかに高い水準にあるかわかるだろう。
国民のほとんどが生命保険に入った結果、日本人が生命保険に支払っているお金は、年間40兆円を超えるほどにまでなっているそうです。
国民総生産が550兆円ですから、1割弱にもなります。家庭1世帯が20年間に払う保険料は1000万円。
生命保険が不思議な商品だと感じるのは、毎月支払っている保険料が、知らず知らずのうちに積み上がって、このように大きな金額となる点である。普通、1000万円近い大きな買い物をする際には念入りに情報収集をし、納得がいくまで比較検討を行うものである。まさか、義理や人情だけで家を選ぶようなことはしないだろう。しかし、生命保険を選ぶ際に、一体どれほどの人が「1000万円近い買い物」という認識を持っているだろうか?
しかし、そんな生命保険業界も、既存の営業手法では成り立たなくなってきており、岐路に立たされています。 1995年に行われた保険業法の大改正から14年、個人保険の新規契約はピーク時から4割近く減少、2007年には保険各社の不払い問題も発覚して、生保にはどこかうさんくさいイメージがつきまといます。
生保業界では長きにわたり、「顧客のニーズに合った商品は何か」ではなく、「既存の販売組織を維持するために必要な商品は何か」という観点から、高収益を確保できる商品開発がおこなわれてきた。
象徴的なエピソードを、大手生保の出身者から聞いたことがある。商品開発担当の若手が市場調査を通じて顧客ニーズを調査して、「保険料が安い単品の医療保険」の開発を役員会に提出したところ、「お前、それで外野(=外交員)に飯が食わせられると思っているのか!」と一蹴されたというのだ。
そこで出てきたのが、本書の著者岩瀬氏が所属するネット通販型の「ライフネット生命」。
営業職員が一軒一軒訪問して足で稼ぐ、従来までの高コスト体質の保険会社から、ネット型で無駄を削った低コスト体質の生命保険会社を立ち上げました。
社長の出口さんは今、時代に合った新しい生命保険会社が必要と言います。
「人間の社会の中で、大切なのは「助けあい」である。そして、助けあいの方法としては、「自助」「公助」「共助」の三つがある。しかし所得が伸び悩み、格差が問題とされるなか、「自助」だけに期待することは難しい。
また、国家財政が逼迫しているなかでは、国に過度に頼ることもできないため、「公助」にも限界がある。とすれば、人々が互いを助け合う「共助」の仕組みが、再び大切になってくる。
「共助」を担うのが、民間の保険会社の役割である。
にもかかわらず、生命保険会社は保険金の不払い問題に代表されるように、消費者の信頼を失っており、本来の役割を十分に果たせていない。だからこそ、共助の仕組みを今一度蘇らせることが必要だ。
ということで、本書はいわば「ライフネット生命」のプロモーション本なのですが、そういう側面を差し引いても、既存の生命保険に流されるまま加入するのがいかに危険なことかは、十分に理解することが出来ました。
日本は公的な保険制度(健康保険とか)が整備されており、公的に保障がないアメリカと違って国民一人あたりのリスクが小さいため、
基本的には、生命保険に無理に入らなければならないケースはそう多くないようです。
入るにしても、どんな保険がいいのかは知っておくとよいでしょう。
その答えの一つに「かけ捨て」があります。
一般的に考えられている「かけ捨て保険は損」という認識が間違っている、ということだ。
たまたま、「かけ捨て」という言葉自体が「捨てる」という語感を含んでいるため、損をしているかのような気分を増長させられるだけで、すべての保険は「保障」の機能を持つ以上、「かけ捨て」の要素を含んでいる。
興味深いテストの結果を聞いたことがある。
かけ捨て型の医療保険と、保険料を上乗せする代わりに、無事故で生存していた場合に事後的に「健康ボーナス」という形で保険料を返す、という二通りの保険を消費者テストで見せた。
たとえば、保険料を10万円払って保障のみを確保する保険と、保険料を20万円支払って、無事に満期を迎えたら10万円が払い戻される保険をイメージすればいい。
この二つの保険のどちらかがよいと思うかと聞かれて、消費者はどう答えただろうか。
お金の出入りだけでみれば、両者のの間に損か得かはないことはすぐにわかるだろう。
後者は、自分が多めに払い込んだお金を、後から返してもらっているだけだ。むしろ、期間中にそのお金は使えないし、保険事故にあったり、亡くなった場合には払い込んだ保険料の部分は返却されないので、かえって不利だと考えられる。
理屈は仮にそうでも、それでも後者を選ぶ人の割合が多いだろうな、とは想像できた。
私の予想では3対7くらいの割合かと思われた。
結果は5対95.すなわちほとんどの人が「あとから10万円もらえるほうがお得と感じた」と答えたのである。
人生で2番目に大きい買物、生命保険はかしこく選びたいもんですね!
この本は、驚くべきことに、PDFで全文ダウンロードできます。(4/15まで)
つまり「FREE」です。
書籍のあり方にも市場に問題提起している一冊と言えます。
文藝春秋の新書『生命保険のカラクリ』が印刷可能なPDFで全文配布中(4/15まで) : ライフハッカー[日本版]
http://www.lifehacker.jp/2010/03/100301pdf415.html
書籍は「フリー」になるか: 生命保険 立ち上げ日誌
http://totodaisuke.asablo.jp/blog/2010/02/27/4910657
僕は書籍を買いましたが、ちょい見したい人はダウンロードして読んだらいいんじゃないかと思います。
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。