作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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【書評】600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス


ついに上場しましたねぇ。クックパッド。どこまで大きくなるのでしょうか。
クックパッド本を読みました。web業界界隈で話題になっていた本なので、「これは読まないと」と思ってました。
新書サイズで小さいので、割とお手軽に読めます。
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気が付いたら、「あぁ、そういうことか」「なるほど!」とつぶやきながら読んでました。
真理が見えたときの鳥肌が立つような経験、と言ったらいいんでしょうかねぇ。ものすごくためになりました。

ユーザー数600万人。ほとんどが女性。もはや、このサイトは主婦の生活の一部になっています。
数あるサイトのなかで、なぜ人はクックパッドを選ぶのか。そして繰り返し訪問するのか。その答えは、「技術」ではなく、「料理が楽しくなるサイト」に徹底的にこだわった運営にありました。

「白菜」と検索窓に入れたとき、白菜を使った料理がただズラリと出てくるのではない。検索窓に入れるときは、どんなケースが最も多いか。それを想定するのがクックパッドなのだ。そこから、多くの場合「一株丸ごと白菜がある」という仮説のもとで検索エンジンが動く。つまり、白菜がレシピに入っている料理ではなく、白菜をたくさん使った料理が出てくる、ということだ。

(クックパッドは)「毎日の料理が楽しみになる」「ナンバーワンになれる」「儲かる」の三つが得られるものしか絶対に手を出さない。例えば、コンテンツひとつとってみても、これほどのユーザーがいるならば、料理や材料をめぐって掲示板でいろんな意見が交わせたりすれば、インターネットのサイトとしては面白い企画になると思えるのだが、という質問に、社長の佐野はこう語ったのである。
「料理が好きなユーザーさんがたくさんいらっしゃいます。この調味料についてどう思うか、なんて議論をすれば、白熱するでしょう。実際、要望があるのも事実。でも、そんな議論をしたところで料理がおいしくなるでしょうか。その調味料がいいか、悪いかなんて、どうでもいいことです。大事なことは、おいしく作れることです。自分が嫌なら使わなければいいし、いいと思えば使えばいい。どういうわけだか、みんな必ずいいか悪いか、という結論を出したがるんですね。そして、どちらかの意見が出ると、反論をしたくなる。でもそんなことは、おいしい料理とは全然関係がないと思いませんか。大事なことは、多様な価値観がちゃんと共存できること。それぞれの人が、それぞれおいしい、と思えることです。」

クックパッドでは、レシピの人気ランキングは、公開していないのだ。日本人に限ったことではないと思うが、ランキングはやはり気になるもの。それこそユーザーのニーズも大きいと思うのだが、やらないのである。膨大な量の検索データが得られるクックパッドだ。人気ランキングを掲載するなど、おそらく簡単だろう。だが、しない。佐野は言う。
「検索結果は新着順です。それは、新しく投降した人のレシピに注目してもらいたいと考えているからです。正直なところ、人気ランキングを公表してほしい、という要望はとても多いです。でもそもそも料理というのはとても主観的なもののはずなんです。一番人気のあるものがおいしい、というわけでは決してない。もっと多様であるべき。そこに、クックパッドが人気ランキングという形で、ある種の答えを出してしまうのは、やっぱり変だと思うんです。それは、料理を楽しくするものではない」

「楽しくなるサイト」はユーザー視点でないといけません。最先端の技術を使っても、それがユーザーの利便性や楽しさにつながらなければ意味がありません。
ですが、サイトを提供する側はどうしても技術から入ってしまいます。その結果、使いにくいサイトや、分かりにくいサイトが出来あがってしまいます。残念ながらそういうサイトが非常に多いと言います。
web技術者にとって本当に必要なのは、「分析・解析力」「プレゼンテーション力」なんでしょうね。
「何のために作っているか」「誰のために作っているか」を常に考えていないと、ゴールを見誤ってしまいます。そんな教訓をクックパッドは教えてくれます。

佐野の好きな言葉に、すぐれたドアノブは押せばいいか引けばいいかがすぐにわかる、がある。
いくら美しいドアノブでも、押す、引く、などと書かれたものは信用できないと考える。ユーザビリティやユーザーインターフェースに致命的な欠陥があるということだ。
「優れたモノは、無言語なんです。説明が必要なサービスというのは、やはりレベルが低い。いくら美しくても、ここをつかんでください、なんて書かれたコップを使わないでしょう。美しさを重視したから説明ありで我慢しろ、こっちが大変だから説明させろ、というのは極めて傲慢な考え方なんです。何も説明なしで機能が果たせる。それを目指さなければいけない。」

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