作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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WordCampKobeにスタッフ兼スピーカーとして参加しました。


9/11に開催されたWordCampKobe2011にスタッフ兼スピーカーとして参加しました。
いろいろと貴重な経験をさせてもらい、WordCampおよびWordPressについて考えるよい機会にもなったので、ブログに残そうと思います。
とても長くなってしまいましたが…
 
 

WordCamp実行委員会発足

2011年5月のWordBench神戸(勉強会)で、WordCamp神戸が立ち上がりました。
WordCamp発足の場にたまたま居合わせただけでなんとなくスタッフになりました。特に動機はありません。
立ち上げ時にいたメンバーは10人くらいでした。
 
 

WordCampKobe公式サイト公開(7/14)

公式サイトは、公開して1日目でいきなり参加登録100人を超えました。
この初日の盛り上がりを目の当たりにして、何かただならぬ雰囲気を感じました。
スタッフの仕事はそれまであまり真面目にやってなかったのですが、この時期から「大きなイベントになるから、まじめにやらんとあかんかも?」
という気持ちになっていきました。
僕自身過去のWordCampを体験したことが無かったので、WordPressのコミュニティを甘く見ていました。
 
 

準備から当日まで

イベントが準備されていく様子をスタッフとしてリアルタイムに観察できるのは刺激的でした。
たった1日だけのイベントのために、様々な準備をしなければなりません。
ほんとに、あの1日だけのために、何十倍もの時間と労力が注ぎ込まれています。
大きなものだけでも以下のようなタスクがあります。
・スポンサー集め、依頼、入金確認、グッズ・チラシの受け入れ態勢
・会場の手配、参加者の誘導方法、案内板の準備。
・スピーカーとして招待したい人をノミネートし、依頼をかける。
・公式サイトの構築
・当日配る印刷物の準備
・受付、懇親会の手配とかやり方とか。
・当日スタッフの役割分担を決める
 
 

スピーカーとして登壇することに

誰かに教えるほどWordPressは詳しくないので、もともとスピーチする気はなく裏方に回ろうと思っていました。
しかし、スピーチ枠が余っており、他にやりたい人もいない感じでしたのでやらせてもらうことにしました。
WordPressの中身についての難しい話はできないですが、XOOPSはそこそこ知っていたので、「他のCMSやブログとの比較」で話をすることにしました。
実行委員会側から依頼した来賓スピーカーはどなたも有名な方ばかりです。東京や地方からわざわざかけつけてくださいます。
そんな方々とおなじ土俵でステージを預かるのはとても気が引き締まる思いでした。
持ち時間が20分とはいえ、彼らと対等に渡り合える品質でなければならないと思うと、中途半端な気持ちでは臨めなくなりました。
お盆休みくらいから準備を始めました。
Steve Jobsが言ったか誰が言ったか忘れましたが、「聴衆が自分のために割いてもらう時間と同じくらいの時間を準備にあてる覚悟で」
を心に留めながら作りました。20分のプレゼン時間×定員60人ですから20時間ですね。それくらいの時間は準備にかけたかも知れません。
 
開始前のやや緊張した面持ち。
http://www.flickr.com/photos/mamy315/6144133282/
 
6144133282_b9698ee674_b.jpg
 
 
 
プレゼンした資料も再度載せておきます。

 
 

当日を迎えて

開催日前日に参加登録が700人を超えていました。
4月に神戸で開催されたITフェスティバルが700人、OSC神戸が600人の動員ということだったので、それに匹敵する数をブログツールという単一のプロダクトだけで集めることになります。
当日集まったスタッフの数も多く、50枚用意したスタッフTシャツが足りませんでした。
最終的には、593人参加の日本最大のWordCampとなりました。
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当日スタッフとして動いて感じたことです。
・僕は受付を担当しました。スポンサーのチラシを持ち帰ってもらうのに苦心しました。
 イベントはスポンサーのおかげで成り立っているので、チラシ持ってかえって

 もらわないと会わせる顔が無いのです…
・会場を熟知しているヒラタさんがスタッフで良かったです。協力的な現地職員が
 いないとたぶんいろいろスムーズにいかなかっただろうと思いました。
・スポンサーブースを中講義室前に設けましたけど、そこが特に混雑したので通路
 がふさがれてしまいました。
・中講義室はタテに長いので、うしろの方の席だとスライドが見えません。スピーカー
 にもそのへんの施設事情を伝達しておくべきだったと思いました。
・rieさんのセッションの人気がすごかったです。120人の教室なのに立ち見でも入れ
 ないくらいの熱気で、人気の高さを伺わせました。
 たぶんこの人、将来大物になるなと思いました。
 僕が作った印刷物のデザインを、彼女が添削(というかダメだし)してくれたのですが、
 それもよい思い出です。
・mamy315さんのセッションでも教室に入れない人がいたという話をあとで聞きました。
 ちょうどそのころ僕は受付とか他のことが忙しかったので気がつかなかったけど、
 なんとかしてあげたかったです。教室サイドの腰掛けをフル活用すればもう少し
 入ったかも知れない…
・懇親会受付は、一般の方の参加申し込みと、スポンサーの方の参加枠があるのですが、
 スポンサー参加枠が正確に把握できてなかったので混乱しました。
 もっと正確にリスト作っておくべきかと思いました。
 でも、当日追加枠も無事埋まって良かった! 懇親会受付の方お疲れ様でした!
・セッションの開始時刻が遅れてしまったのは無念です。たぶん人の入退場に時間が
 かかったためと思いますが、これは反省すべき点と思います。
 とはいえ、会場キャパの見積もりは難しいです。無駄に大きい会場を使うと赤字に
 なってしまいます。
 来場予測にあわせてフレキシブルに会場をスケールできる場所があれば良いのですが。
・公衆Wifiの呼びかけをしましたがまったく効果ありませんでした。自分が発案した
 だけに残念です。まぁしかたないですね。
・会場のあちこちでインタビューしているらしき人を見かけましたが、あれはどこの
 取材だろう? Webで公開されてたら見てみたい。
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 ※追記:YokosoNewsの取材だったそうです。
 
・自販機の場所を何人かに聞かれたんですが正確に答えられませんでした。
 僕の準備不足でした。
・BarCampがひっそりしていたけど、あれってただの雑談コーナーだったんかなぁ?
・スタッフは苦行の連続だと思っていましたが、これだけの参加者のイベントを
 自分たちの手で回せたという達成感は病みつきになりますね。
 楽しかったです。
・準備はいくらしてもしきれないし、何か至らない点も数多く出てくるものですが、
 大きなトラブルもなかったので、総じて成功だったんじゃないかと思います。
 
 

反省点

会場が狭くて人が溢れてしまった点。これがアンケートでも最も多かった不満です。
スタッフも当初は想定していなかった驚異的な来場者数だったので、会場キャパを超えてしまいました。
「会場まで足を運んだのに、希望のセッションが見られなかった」という参加者の方はさぞかし無念だったと思います。申し訳ありません。
当日までそのあたりの対策をせず、「なんとかなるさ」とか「タダなんだから我慢してくれ」的な雰囲気があったことは否めません。このへんはもっと対策すべきだなぁと思いました。
セッション開始時刻が遅れた件も、入退場の混乱に拍車をかけてしまいました。
 
また、イベントの核となるのはやはりセッションです。
受付とか懇親会とか公式サイトとかの準備はもちろん大事なんですが、来る人はやっぱりセッション目的で来るんだから、セッションの質をおろそかにすべきではないと思いました。
その点、お招きしたスピーカーの方々のプレゼンは、あとから資料を見せてもらう限りどれも素晴らしいものでした。
実行委員会側としては、本当にこの人達にお願いして良かったと心から思いました。
スピーカーをかけもちしているスタッフは、その点準備で負けていたように思います。
負荷がかからないようにスピーカー専任にした方が良かったかもですね。
 
セッション時間20分は、短くて忙しいと感じる参加者が多かったようです。確かに僕が参加者だったらそう感じるかも知れません。
ただ、スピーカーからの立場で言わせてもらうと、あれくらいの時間が準備の時間を考えるとちょうどいいです。
これ以上長くなると準備がかなり大変になります。まぁ僕がそう思うだけで、他のスピーカー方々はもっと喋りたかったかも知れませんが…
 
スタッフの持ち場担当は午前と午後の2組に分けましたが、午後はセッションがあるので、午後に持ち場担当になるとまったくセッションを受講できないことになります。それを避けるために、午後はさらに担当を2組に分けた方が良かったかも。実際午後はあまり人手が足りない感じでした。
 
 
当日は、一日があっという間に過ぎ去りました。
他の方のセッションは1つも聴くことができませんでしたが、とても充実した一日でした。
参加者の方にもひとりひとりお礼をいいたい気持ちでいっぱいです。どうもありがとうございました。
 
 
それから数日すぎてほとぼりが覚めてから、今回のイベントとはいったい何だったんだろうとふと考えてみたのでその考察も書いておきます。
 
 

WordPressコミュニティについて

これほどの参加者を集めることができるWordPressコミュニティの力に圧倒されます。
WordPressは向かうところ敵無し。今が全盛期なのは間違いありません。
コミュニティが活発なのはよくわかります。しかしながら、スタッフをやってても素人がすぐには入っていきにくい空気少しあるような気がします。
単なるヒガミや妬みかも知れませんが、コミュニティはいわゆる「WordPress勝ち組」な有名な方を中心に構成されていると感じます。
もちろん誰でもウェルカムだとは思うのですが、WordPressに貢献している度合いでコミュニティ内での地位が測られているような気がして、その他大勢な外野組がなかなか入っていきにくい雰囲気があるんじゃないかと思います。
今回のWordCampは神戸でしたが、どこの地方でWordCampをやっても、注目を浴びがちなのはWordPress界のお偉いさんです。
それはまるで、地方の補欠選挙なのに政党の党首が現地入りし、有名な人どうしで舌戦を繰り広げるのに似ています。
地方でWordCampをするのだったら、そういうスタイルよりもむしろ井戸端会議や自治会のように、ローカルな人たちがローカルなコミュニティを楽しむささやかなイベントにした方が本当は良かったのではないか?とイベントが終わってから感じました。
今回、日本最大のWordCampになりました。ですが、この参加者数は神戸だからこそ出せたのでしょうか?
 
たぶん違うと思います。
 
別の場所でやっても同じように最大規模になったのではないかと思います。
参加者は地元民がもちろん多いと思うのですが、全国から集結したWordPressフリークがけっこういます。
これは神戸のためのWordCampではなく、たまたま神戸で開催された日本のWordPressサミットであり、どこの地方でやったって全国から人が集まるので参加人数は必然的に多くなると思うのです。
 
 

誰のためのWordCampか

WordPressは無料です。多くのボランティアの貢献で成り立っています。
しかし、彼らもやはり食っていかなければいけませんので、なんらかのマネタイズ方法を考えねばなりません。
それがWordPress.comであったり、有料でWordPressの構築を支援するサービスであったりするわけです。
そういうビジネスモデルを考えた場合、WordPress単体は無料でも、全体的に見ればそれはビジネスの一部に組み込まれているという言い方ができます。
WordCampも同じです。参加は無料です。ですがそれはWordPressエコシステムに組み込まれています。
WordCampという名前を使用するためにはWordPress Foundationからの承認が必要で、利用についても厳しいコントロールが敷かれていることがそれを裏付けています。
運営する側はWordCampという場で宣伝をすることで自分たちのビジネスにつなげます。WordPressの認知度が広がることは、WordPressのシェアの拡大につながります。そうやってWordPressの灯をともし続けています。
そういう意味で、WordCampは来場者のためだけのものではありません。
むしろ、来場者は受益者ではなく、WordPressのマネタイズや人気拡大に寄与している貢献者とも言えます。
 
良くも悪くも、ビジネス化されたWordCampだからこそ、これだけの来場者を集めたのであり、神戸のローカルイベントではなく、全国的に影響を及ぼすイベントとなり得たのだと思います。
 
 

Web業界のビジネススタイルとWordPressの立ち位置

Web業界はパソコン1つと自分の腕さえあればビジネスできます。
パソコンは一週間バイトすれば買える時代です。
オープンソースソフトウェアは無料で手に入ります。
場所は自宅でもカフェでもどこでも作業できるしオンラインで繋がっていられます。
要するに物理的な参入障壁が無く、自分のやる気次第で始められるのがWebの世界です。
しかし逆に、参入障壁が無い分、どこかで他者との差別化を図らなければなりません。
でも差別化といっても自分のスキルくらいしか差をつけるところがありません。
そうした時代背景を考えたときに、単なる静的なHTMLだけではなく、ある程度知識が必要とされる動的コンテンツ制作に注目が集まるのは自然な流れです。
そうした「食っていくための道具」としてノマドワーカーやWeb零細企業にとって絶妙な位置にWordPressがあり、しかも無料で使えるものであったからこそ、これだけの発展を遂げたのではないか、と思えてきます。
 
 

WordPressはどこへ行こうとしているか

目下WordPressの天下ですが、残念ながら栄えるものは必ず衰退していきます。
mixiやtwitterは今では頭打ちの様相を呈しています。Movable TypeもXOOPSも一線を退きました。
[参考]
「ツイッター」米国での人気頭打ちに : J-CASTニュース
ミクシィが続落、アプリやサイトの利用が頭打ちに 2011/03/10(木) 11:00:41 [サーチナ]
 
今のWordPressの勢いを見ると、衰退していく姿は想像しにくいです。
ライバルになるCMSが存在しないのでWordPressの地位はしばらく安泰なのかなとも思いますが、ちょっと視点を変えてソーシャルネットワークな世界を見てみると、ライバルになりえる相手はいます。
クラウドサービスがが普及していくと、WordPressのようなスタンドアロンでインストールするタイプのWebアプリは流行らなくなるでしょう。
つまり、WordPressはCMSとしてのライバルはいないが、ラストエンペラーになる可能性はあります。
 
tumblrは既にWordPress.comの8倍ものトラフィックをさばいています。[参考]
facebookは7億人ものユーザがいます。
こういうソーシャルでクラウドなプラットフォームがCMSの領域もカバーしてくる日がやってくるんじゃないかと思います。
 
 

次回への取り組みをするかどうか

神戸で次のWordCampがあるかどうかは分かりませんが、次にやるときは規模はもっと小さくてもいいんじゃないかと思っています。
大企業病のように身動きが取りにくくなったWordCampという冠を捨てて、名古屋で行われたWordBeachのようにもっと自由な感じにして、地元のネットワークがもっと強まるイベントにした方が面白いかな、という気がしています。
WordPressはもう十分たくさんのユーザがいますから、神戸だけでもWordPressエキスパートはたくさん見つかりますし、少人数の方が素人には入って行きやすくなりますから、草の根的な底上げができると思います。そういうやり方で神戸方式が確立されれば、より個性が出て楽しくなると思います。
一方、WordCampという名前のつくイベントは、日本を代表する東京にまかせて1000人を目指したらいいと思います。

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