作者:上村崇 フリーランスのIT系エンジニア
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WordPressサイトを構築するといくらかかる? 見積り勉強会で価格を出してみた


2014/1/11のWordBench神戸勉強会のふりかえり記事です。
イベント参加登録の管理はDoorKeeperで行っています。

WordPressでWebサイトを作るための構築事例や技術的なノウハウは世に多く出回っており、ネットで検索すればWordPressについてたくさんの情報を仕入れることができます。
しかし、


・誰かに頼まれて自分がWordPressサイトを構築する場合はいくらの見積りを出せばいいのか?
・Web制作会社にWordPressサイトの構築を依頼する場合はいったいいくらかかるのか?

これらについては情報が少なく、ノウハウもあまりオープンにされません。
 
WordPressの勉強会「WordBench神戸」では、今まであまり扱われてこなかった「見積り」にスポットを当て、体験型(ハンズオン形式)で架空の案件を見積ってみました。

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イベント告知ページ
第30回 WordBench神戸勉強会 WordPressサイトを見積もってよ!

架空の案件として、街の歯医者さんのWebサイトを構築します

この企画を最初に提案してくださった河村さん( @SORATOMO )が、気合の入った架空案件を用意してくれました。
・医院の新着情報有り
・院長ブログ有り
・お問い合わせフォーム有り
という典型的なWordPressサイトです。
 

要件

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sitemap

PDF版はこちら→ 要件 サイトマップ
 
上記要件以外に、参加者からの質問・確認があったので追加仕様としてまとめておきます。

  • 小児科とインプラントを兼ねる歯医者は現実的ではないとの指摘がありましたが、インプラント業務もやってることにします。
  • 相見積りです。
  • 問い合わせフォームは、最後の完了画面は出さなくても良い。
  • 社内にプログラムできる人がいなければ外注してもよい。
  • 新着情報は医院からの公式のお知らせ、ブログは院長の日記的なものを書きます。

規模10人程度の中小Web制作会社の社員が見積を作成するという設定です。

 

チームに分かれて見積り!

40人ほどの参加者がおり、4人✕10チームに分かれて見積りを作ってもらいました。
経験者が1つのチームに偏るとバランスが悪いので分散してもらい、未経験者をサポートしてもらうように配慮しました。
作業開始前に以下のガイダンスを行いました。

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「WordPressサイトを見積もってよ! ガイダンス」

 
見積価格を出すことはもちろん大事なのですが、その価格を出すにはそれなりの根拠が必要です。WordPressの仕様や技術的知識もある程度知っておかないと制作のイメージが湧かないため、見積額を正確に出すことができません。そのような技術的ノウハウや考え方もあわせて学習する機会になるよう配慮しました。

見積り結果

どの見積りが優れているかを投票形式で集計した結果、チーム「ドしろうと」が最も優れた見積りとして選出されました。
投票基準については、見積価格に競争力があるかどうかどうかだけでなく

・要件を満たしているか?
・発注者の立場で見て分かりやすいか?
・実現性、具体性、安心感

の要素についても5段階評価し、もっとも高い合計点を獲得したチームを優勝としています。

以下、各チームが作成した見積りです。
※これは架空の案件を元にした見積りシミュレーションの一例であり、市場の適正価格を定義したり誘導したりする意図はありませんので誤解なきようお願いします。
また、見積り未経験者もいる中60分で出した成果のため、アバウトなところは大目に見ていただければ幸いです。

1_IMG_1458-767x1024 1_IMG_1459-767x1024 チーム名:Ago-HIGE ¥372,750
作業日数は3日。(全チームの中でも最短)
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チーム名:ガールフレンド(仮) ¥577,500
制作費の10%を進行・営業費として計上している。
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チーム名:子連れ ¥760,000
対応ブラウザ要件がIE8以上ということなので、ブラウザごとの検証工数を5万円見積もっている。
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チーム名:マニュアル大嫌い ¥932,400
独自テンプレート3種類を既に持っているので、そこから選んでもらう。
マニュアルはめんどくさいし作りたくないから、マニュアル作成費を高めの30万円に設定して顧客にあきらめさせる作戦。
仮に顧客がその額を出したとしても、外注して孫請け会社に作らせる。
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【優勝】チーム名:ドしろうと ¥488,355
一般的なWordPressサイトの場合、見積額を30万円〜50万円くらいに収めるのが良いという経験則があった。安すぎると怪しまれるし、高過ぎると理由を聞かれる。
お問い合わせフォームにSSL採用。
別途、運用・保守費用の見積も作った。→ 運用・保守見積1 運用・保守見積2
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チーム名:放出(untitle) ¥1,039,500
街の歯医者にSEOは必要ない。
代わりに折込チラシを制作をして配布する。(15万円)
Webサイトだけでなく、マーケティングを考えて最適なソリューションを提供している。
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チーム名:ちこく ¥1,486,800
直感的には、全体で100万円くらいというイメージを持っていた。
一日の作業単価を高めの8万円に設定したため、見積額としては大きくなっている。
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チーム名:さくら ¥600,600
デザインは2案作成する。
値切られた場合は、工数を削減できる「子ページ」にて作成する。
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チーム名:ネイビー ¥250,000
新規サイト制作は赤字前提の価格。
新規開業する医院の懐具合を考えて、初期費用を抑えた。
今後の長い付き合いの中で、運用・保守費用としてコストを回収できれば良いと考えている。
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チーム名:ジャーマニー ¥186,900
まず時間単価を定義し、構築にかかる時間を掛けあわせて見積りを算出している。(1時間あたり4000円の単価で作業時間は44時間)
中でもHTMLのコーディングは8hと短め。
マニュアルはA4 2ページ
レスポンシブ対応

 

ハンズオンを終えての感想

今回の架空案件は、WordPressではよくある制作事例です。ほとんどのチームが以下のような構築プランで考えていました。

新着情報 新しく「カスタム投稿タイプ」のエントリを作って実装。
(ただし、月別アーカイブは技術的に難しいので実装しない方向で調整すべき)
院長ブログ デフォルトの「投稿」機能で実装。
お問い合せメールフォーム 確認画面がない「Contact Form 7」プラグインで実装。
(確認画面が必要な場合は他のプラグインを探す必要がある)
その他のページ 固定ページで実装。

以下、ハンズオンを通じて気づいたことです。

見積り

  • 同じ要件でも、チームによって見積額に18万円〜148万円の開きがでました。この結果から、典型的なWordPressサイトの見積りでも現状はまだまだ標準的な見積手法が確立されていないことが分かります。そして制作者の間でも、はっきりした相場観がまだ浸透していないのではないかと思います。
  • 発注者の財力を見極めて、同じ要件でも見積額を変えるというスタンスの人が多くいました。例えば同じ歯科医でもインプラント専門の歯医者は儲かるため見積額を高めに設定するという具合です。
  • 見積の計算において、「1日=○円」という作業単価を基準にして、かかる日数を積み上げて出す方式のチームがありました。また「1時間=○円」という時間単価を基準にして見積りを出すチームもありました。人月(人日)計算ではなく、ページボリュームとか技術的難易度を基準に計算したり、ディレクション費を一定の割合で積算するチームもありました。
  • 作業工数は概ね10日〜20日くらい、顧客に告げる納期は1ヶ月としたチームが多かったようです。
  • 初期構築コストとは別に、運用・保守の費用が必要というチームが多かったです。年額10万円〜20万円くらいに設定した例が多く見られました。
     運用・保守内容としては「サイトのバックアップ」「電話サポート」「コンテンツ更新」などです。
  • リアル歯医者に聞いたところ、200万円くらいの構築事例もザラにあるということでしたので、そういう意味では今回はどのチームも良心的な価格だったと言えそうです。
  • いつも仕事で使っている自前の「見積計算シート」を持ち込んで、それに今回の架空案件の要件を当てはめて見積額を計算しているベテランもいました。

実装方法

  • スマートフォン対応はレスポンシブWebデザインを採用するチームが多く、WPtouchなどのスマートフォン用プラグインを使用するチームは皆無でした。もうスマートフォン用プラグインは時代遅れになってきているのかも知れません。
  • 使い方マニュアルの作成は気が進まない人が多かったようです。できれば作りたくないそうです。みなさん構築が大好きです。
  • 実績のある制作会社は自前でWordPressのオリジナルテーマを用意しており、それを組み込んで工数短縮するなどの工夫が見られました。

イベント全体

  • この要件ボリュームで60分という見積作業時間は短かったようです。もっとシンプルな架空案件で出題したほうが良かったかも。
  • しかし、時間が短かかっただけに濃密な時間を体験できたようです。
  • 見積りをしたことが無い未経験者にとって、この見積り作業は刺激的だったようで、経験者からたくさんのアドバイスを吸収していました。
  • 最後に設けた各チーム5分の発表時間については、「5分では短いのでもっと多く時間を割いてほしかった」という声が聞かれました。

おまけ

今回の歯医者の架空案件については、当初はもっと多くのサイトコンテンツを含めていました。
しかしこのボリュームでは大きすぎてイベント時間内では消化しきれない懸念があったため、絞り込んで今の形になりました。
その当初案件についてもせっかくですので公開しておきます。

「架空案件やのにどこまで本気出すねん…」といった内容になっております。

関連ブログ

ご意見、感想どうもありがとうございます。

見積もりは難しい・・ – ronokunの日記
WordPressの見積り勉強会を終えて、運営の一人として思うこと うえむ日記
WordPressサイト見積り勉強会の資料を見て、見積もりに関して考える – 乱れなよ、そして召されなよ
Web制作の見積もりの難しさとか相場とか|withComputer
サイト構築のお値段(WordPress) – 街中デザイン
WordPressサイト構築の見積もり勉強会の様子を見てみよう
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